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小沢健二 − 1st Album「犬は吠えるがキャラバンは進む」(あるいは「dogs」)

フリッパーズ・ギター解散後、小沢健二のソロ活動が始まった。
そのアルバム第一作がこれ。

後に「dogs」としてリメイクされる。
ジャケは凝っていて綺麗だが、歌詞カードの中の本人によるライナーノーツ(名文!)が消えているのが不満。
できれば「犬は吠えるが〜」の方を手に入れたいところである。

犬は吠えるがキャラバンは進む

1.昨日と今日 – ★★★★
ブルース調のセブンスコードが全体的に鳴り響く。
金属的なミュートの音とバッキングが絶妙に左右で分けられている。
曲調もそうだが、歌詞もどこか殺伐とした雰囲気。

ぎこちないだけの皮肉屋たちが
行く先もないまま 街で深く深く深く溺れ死んでゆく

西部劇の埃っぽいバーみたいな感じが伝わってくるような気がします。
最後はフェードアウト。
フリッパーズギターの後、はじめてこのアルバムを聴いた人はこの一曲目にどんな感想を持ったろうか。

2.天気読み – ★★★★★(+★)
さて、名曲だ。ファーストシングル。
小沢健二の絶妙な日本語感覚と、一聴するとスカスカのようにさえも聴こえるバンド隊。
今にも倒れそうに見える、しかし、それでいて絶妙の安定感を保っている。
Bメロでメジャーに転じ、そこから語られる歌詞が素敵だ。

雨のよく降るこの星では
神様を待つこの場所では
木も草も眠れる夜が過ぎるから
君にいっつも電話をかけて眠りたいよ
晴れた朝になって君が笑ってもいい

このフレーズでは、前半三行と後半二行に音楽が分割している。そこが変拍子ではないが、妙な雰囲気があって、とてもよいです。こういうところでバランスを取っている感じ。
さて、これもフェードアウト。

3.暗闇から手を伸ばせ – ★★★★★
このアルバムの中で、どれがシングルでしょうか。
…と聴かれても、僕は答えに窮するでしょう。答えは、#2「天気読み」とこの曲なわけだが。
この曲が小沢健二のソロのセカンドシングル。
スネアの一打から、ささやかなギターと、グルーヴィーなベースとドラムの世界へと吸い込まれて行く感じ。
この曲も「友達は家へ帰ってしまった〜」の部分が3小節+4小節の分割になっていて不思議な感じ。
先でも述べたが、ギター、ベース、ドラム(、そしてたまにキーボード)、というシンプルな構成に美学を感じる。
「ヘイ、ヘイ、ヘイ!」からAメロに回帰する部分が凄くいい。ストンと腑に落ちる。

4.地上の夜 – ★★★★
スローテンポな曲。
トレモロのかかったギターとオルガンが曲の表面を支配している感じ。
夜にムーディーな気分で聴きたい一曲。
ギターソロも歪みはまったくと言っていいほどかかっていない、控えめなもの。
#1と同じようにブルースのような感じもする。メジャーコードだが、どこか日陰に居るような気分。

5.向日葵はゆれるまま – ★★★☆
このアルバムのなかで一番短い曲。
ピアノとギターと指パッチン(!?)によるシンプルな曲。

WOH… THANK YOU

っていう歌詞が、シブさを狙ったみたいで面白い。

6.カウボーイ疾走 – ★★★★★
ここからアルバム終盤、という感じ。
アルバム全体の気分からすると、この曲はかなり明るい面が出ている。
嫌気がさしちまった」とだるげに歌うAメロからさっと霧が晴れたように繋がるBメロがとにかく素敵。

カウボーイはスペードのエースとか言って BABY×5
草笛がひどく上手い奴だった

っていうメロディーにグっとくる。グっと来ずにいられるか!

7.天使たちのシーン – ★★★★★(+★)
邦楽史に残ります。この曲が残らずにどの曲を残したらいいのか。…「永遠なるもの」とかかな?
とにかく名曲です。語る事は他にない!
…というのもアレですので一応ちょっと書きます。
この「天使たちのシーン」という曲は、このアルバムのハイライトであり、フリッパーズ・ギターというユニットから小沢健二という個人が飛び出して行くにあたって、ある意味での訣別すら感じられるほどの会心の一曲です。
歌詞を引用しておきます。

いつか誰もが花を愛し歌を歌い 返事じゃない言葉を喋りだすのなら
何千回ものなだらかに過ぎた季節が 僕にとてもいとおしく思えてくる

愛すべき生まれて育ってくサークル
君や僕をつないでる緩やかな止まらない法則(ルール)

13分31秒というとても長い曲ですが、決してその時間を無駄に消費する事ない、密度の濃い曲。

8.ローラースケート・パーク – ★★★★★(+★)
長大な名曲である#7「天使たちのシーン」に続けて聴くと、どこかアッサリとした印象を残すかもしれませんが、これもかなりの名曲だと個人的に思っています。
特に、旋律と歌詞の乗せ方についてはこのアルバムの白眉であると勝手に思っています。
爽やかさに関しては、いわゆる彼の「王子期」にすらないものではないだろうか、と。
誰かが髪を切っていつか別れを知って 太陽の光は降りそそぐ
ありとあらゆる種類の言葉を知って 何も言えなくなるなんてそんなバカなあやまちはしないのさ!

感想 – ★★★★★
名盤です。
シングル曲である#2や#3もそうですが、後半畳み掛けるように#6,#7,#8と名曲が続きます。
「カローラIIにのって」などの曲に代表される、「王子期」の小沢健二とはまた違う、渋い魅力の有るアルバムを、小沢健二のベスト・アルバムにあげるファンも多いようです。
控えめに、50分強、8曲で終わっているところも彼らしい。そのうち1/4が「天使たちのシーン」であるというのは恐ろしいが…。

最後に、このアルバムのライナーノーツを引用させて、この記事の末尾とさせていただく。

どうかこのレコードが自由と希望のレコードでありますように。
そしてこのCDを買った中で最も忙しい人でも、どうか13分半だけ時間をつくってくれて、歌詞カードを見ながら”天使たちのシーン”を聴いてくれますように。
ついでに時代や芸術の種類を問わず、信頼をもって会いに来てくれた人にいきなりビンタを食らわしたり皮肉を言って悦に入るような作品たちに、この世のありったけの不幸が降りそそぎますように。

(中略)

誰もが知っていることだけど、夜が明ける朝は必ず来る。
もし朝が来て眩し過ぎて嫌になってしまったら、それでもしその日休むことができたら、夕方まで寝てしまってから起きて散歩にでも行くかお酒でも飲むことにしよう。
僕がこのCDに望むのは、車の中や部屋の中やお店の中で、小さな音ででもいいから何回かかけられることだ。歌詞なんかうろ覚えのままで口ずさんでもらったりすることだ。
キャラバンは進むし、時間だって進んでいく。
いつか近くで僕がライブをやることがあったら、来て一緒に歌ったり、踊ったりしてほしいと思う。

    小沢健二

(改行引用者)

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