CAN − 3rd Album「Tago Mago」
西ドイツのロックバンド、CAN。
今やもう伝説となってしまった、ジャーマン・プログレの雄である。
メンバーはホルガー・シューカイ(bass)、ミヒャエル・カローリ(Guitar)、ヤキ・リーベツァイト(Drums)、イルミン・シュミット(keyboard)、初期のヴォーカルはマルコム・ムーニーだったが、彼が「ステージ上で『upstairs, downstairs』という言葉を何度も何度も繰り返し、神経衰弱に陥った」(とライナーには書いてあるが、真偽は不明。本当ならなんともアレな話である)後に、路上でパフォーマンスをしているところをメンバーにスカウトされたのが、日本人ヴォーカリストのダモ鈴木、というのは有名な話である。
このアルバム、Tago Mago、まずジャケットに目が行く。なんかヘンな生き物(!?)が、口からヘンな吹き出しみたいなのを出している。人間の頭の形、その脳の部分には、ぐるぐるとした渦巻きが。なんだこれは!
とにかく、音もすごい。この作品は、1971年の作品である。ビートルズが解散してから1年の作品である(何でもビートルズ解散の年代基準で考えてしまうのは悪い癖。わかりやすいけど)! にもかかわらず、先鋭的な音は今にも通ずる、今でも尖っている。そして、新鮮なままである。これはどうしたものか。
このアルバムは、もともと1枚組で構成されていた(つまり、Paperhouse〜Halleluwah)ものを、イルミン夫人の発案でジャム・セッションで構成されるもう一枚を加えたという話は有名である。
久々のレビューは、CANの名盤。恐れ多いが、させていただきます。
このレビューを書き始めてから、今度「40周年アニバーサリー・エディション」が出ることを知った!
HMVによると、「なお、Canはこの『Tago Mago』40周年記念に続き、過去のアルバム全14枚のリマスター盤をまとめたボックスセットや未発表音源をまとめたボックスセットなどもリリース予定となっているそう!(2012年頃リリース予定)」だそうだ(公式によると2012年3月?)。非常に楽しみである!
1. Paperhouse – ★★★★☆
ギターの弦をスライドさせるキュウキュウという音から曲がフェードイン。
少し重苦しい雰囲気の中で、ダモのヴォーカルの周波数が妙な空気を放っている。
少し進んだ所でテンポが急に速くなり、ギターが激しく鳴り始め、ダモが「You just can’t give them no more.」と叫ぶ。
その後、少しずつテンポを落とし、冒頭に回帰(しかし、リズムの形は冒頭とは異なる)したあと、また速くなり曲を閉じる。
僕はこの曲の序盤のイルミンのキーボードが好きである。狭い所でかたかたと連打を行なっている。それによって、あたかも異世界に連れていかれたような気持ちをおこしてしまう。
そしてなんといっても中盤の激しいギタープレイである。バカテク、というわけではない、けして上手くはないのだが、非常にこのバンドとマッチしている素晴らしいギターだと思う。
2. Mushroom – ★★★★★
#1と、どこがつなぎ目かはわからないほど自然にこの曲に入っていく。
ダモはこの曲のある種サイケな歌詞(Mushroomとは、つまりはそういうことなのだろうか?)を、まるで夢遊病患者のようにふらふらと歌う。
音数も少なく、ぼんやりとした曲調なのだが、そうさせているのはドラムの微妙なエフェクトと一小節一音のペースで鳴らされるベースだろう。(ただ、リフレインでは、ドラムが一気に骨太になり、霧が晴れたような印象がある。)
最後、フィルターがかかりながらフェードアウトしていく。
3. Oh Yeah – ★★★★★
これも#2からひとつづき。いきなりの爆音に驚かされる。そのなかから、ドラムとベースがフェードインしていく。
1番では逆再生、2番では英語、3番ではなんと日本語(!)のダモ鈴木のヴォーカルがなんとも印象的。逆再生のものは、たぶん2番とおんなじ事を言っている。この動画で確かめられる。
この曲を聴いて日本人でよかったと思う一方、海外の人々が日本語ヴォーカルをどう感じるのか、この身に感じられることがないのがちょっと口惜しくもある。
最初はミドルテンポなのだが、1番の終盤でぐっとテンポを上げ、間奏へと入っていく。個人的に、間奏のフレーズ最後のベースにFを入れられるセンスが凄いと感じた。
曲は日本語が終わった後、少し盛り上がり、一旦クッションを入れた後、一気にフェードアウトしていく。
日本語の歌詞は、
「一人でそこに座ってる 頭のイカれた奴
虹の上から小便 我らが御許呼ぶ
LSDの街から離れ 餓鬼を恐れ
朝がまだ来ないのを 幸いなことに」
と、歌っているような気がする。「御許」のところを「イモと」とか「ヒモと」とする解釈もありますが、もともと歌詞カードが無いので空耳レベルでしか聞き取れない面白さ、というのもまたあるのではないだろうか。
4. Halleluwah – ★★★★★(+★)
この曲が、レコード一枚目のハイライトである。この18分32秒の大作一曲だけで、B面が成り立っている。
イントロのベースのモチーフ(どこか原始的、民族的な響きもする動機だ)が曲のほぼすべてを支配している。
それにエフェクトの訊いたギターやドラム、後半ではヴァイオリンも重なって、独特な音の風景を作り出している。
そしてその音に乗るダモのヴォーカルもさらにこの曲の魅力を増している一要素である。サビの、ある種本能的に出たようにも聴こえる叫びは特筆に値する。
重箱の隅を敢えてつつくとするならば、急にフェードアウトして行ってしまう所が少々肩透かし……ではあるが、そんなことは全く関係ない!名曲である!
曲名は、Halleluhwahとhが入っているものか、Halleluwahと入っていないものか、二説あるのだが、こちらではアルバム内面、また、ライナーノーツに記されているHalleluwahで記した。でも日本語帯ではh入ってるんだよなあ。どっちだ。
(公式ホームページではHalleluwahになっているので、Halleluwahでしょうね。)
5. Aumgn – ★★★★
ここから二枚目。長尺のジャムセッションで構成されている。ちなみにこの曲は17:22ある。二枚目の中でも一番長い曲である。
Wikipediaによると、「現代音楽・フリー・ジャズ・民族音楽のごった煮」ということ。
実は一枚目より二枚目のほうがCANの本質、核心を捉えているのではないか、と思う。
イントロのギターのキュウキュウという音が一枚目(そしてこのアルバムの)のイントロであるところの#1〈Paperhouse〉のイントロと酷似している、と書くのは穿ち過ぎであろうか。
全体的なギターのフレーズなどに、民族楽器的要素(旋法や、音色によって表現されるパーカッション的要素、「Aumgn」、という、どこかお経めいたうなり、後半のドラムソロ、など)を感じさせる。
特に、後半のドラムソロは圧巻。
風邪を引いてる時などに聴くと、どこかに連れ去られてしまいそうだ。
Aumgnというのは、いわゆる「阿吽」のことだ、という説があるそうだが、出典は不明である。
6. Peking O – ★★★★☆
Pekingは北京、なのだがOとは何だろう。
オルガンっぽい和音から始まり、それにシンバルと、ダモの「朗詠」というようなヴォーカルが入り、ヴォーカルが意味を成さない叫びとなり、いきなりキーボードの刻みによってテンポチェンジ。そこから曲が展開していく。
突然意味不明のダモの即興的ヴォーカル(と言えるのだろうか、これは?)が入ったり、チープな打ち込みのようなリズムトラックが入ったりして、まさに狂気の世界。
しかしこのアヴァンギャルドなトラック、謎の聴きやすさがある。BGMには不向きだが、しっかり腰を据えて聴く、ような重さ、暗さがなく、妙に突き抜けていて、聴いていて楽しい。不思議である。
7. Bring Me Coffee Or Tea – ★★★★
アルバムの掉尾を飾るこの曲は、他の二枚目の曲と比べていささかキャッチーというか、すっきりとまとまっている印象。
曲の長さも6:47とやや短い。
曲全体のテンポもあまり変化せず、調も変わらない。
最後は、なんだかよくあるライヴバンドのように、すべての楽器が同じコードを打ち鳴らして終わる。
妙な落ち着きを持って、このアルバムは締められる。
感想 – ★★★★★
1971年。
ここから30年、ロック・ミュージックは果たしてどこまで進歩しているだろうか?
このアルバムについてはもう語りつくされていて、今さらこんなブログで述べることはないだろうが……とにかくドイツ・クラウトロックの枠に留まらない、ロックの名盤である。
聴いていない人は、是非機会を設けて聴いていただきたい、そんな一枚である。
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CAN来ましたね!
Tago Magoは名作だと思います。あの不気味なジャケも含めて(笑)Future Daysと併せていつも聞いています。
今ではアンソロジー・ベストが出たりとジャーマンロックの再評価が高まってきたように思います。Rovoの功績もあると思いますが…。
コメントありがとうございます!
やっとこさレビューできた、という感じです(笑)
Tago Magoはまずジャケットから衝撃的ですものね。Future Daysも素敵です。
ジャーマンロックは、今まで一定のそうには評価されてきたと思いますが、それが広がっていくとなると愛好者的には嬉しいことですね。
Rovoはドイツからの影響もあるんですよね確か。そこからルーツをたどる方も多そうです。